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エネルギー収率について

9月22日の記事「池上彰のエネルギーを考える」で、エネルギー収率について触れたので、もう少書き加える。エネルギー収率は英語ではEnergy Returned On the (Energy) Invested、普通はEROIまたはEROEIと省略される。生産されたエネルギーと、そのエネルギーを生産するために投入したエネルギーとの比、あるいは倍率である。エネルギーを考える際にはこれが最も重要だが、化石燃料の埋蔵量、代替エネルギー、新エネルギー源などについて書いた物のほとんどがエネルギー収率について全く言及していないのは、本質を見ないで物事を論じているようなものだ。

エネルギー収率が100なら、次のエネルギー生産のために保留する部分は1%で、残りの99%は自由に使える。エネルギー収率が10まで下がっても、まだ90%は自由に使える。しかし、エネルギー収率がそれ以下なってゆくと、自由に使える正味のエネルギーは急激に減少する。(エネルギー収率:自由に使えるエネルギーの割合)の形で書くと、(10:90%)、(5:80%) 、(3:67%)、(2:50%)、(1.5:33%)、(1:0%)である。エネルギー収率が1だと、正味のエネルギー生産はゼロで、自由に使えるエネルギーとしては何も残らない。エネルギー収率1以下になると、投資したエネルギーより生産されたエネルギーの方が少ないから、エネルギー生産ではなくてエネルギー消費でしかない。

エネルギー源としてはいかに量的に豊富でも、収率が悪ければあまり役に立たない。化石燃料は、豊富であることの他に、エネルギー収率の高いことが、現在の大量消費工業文明を造った理由である。エネルギー収率の高いエネルギー源であるためには、エネルギー密度が高いことと採掘・収集が容易でなければならない。太陽エネルギー、風力エネルギー、潮力エネルギーなどが、エネルギー資源は豊富でも今まであまり使われて来なかった最大の理由は、エネルギー収率が低いからで、エネルギー収率が低ければ当然エネルギー価格も高い。

天然資源は、世の中の常として、発見も採掘も容易で、質の高いところから先に利用される。つまり、探索、採掘、精製に要するエネルギーが少なく、正味のエネルギー収率が高い資源が先に使われ、後に残った資源ほど質が落ち、正味のエネルギー収率は減少してゆく。石油のエネルギー収率も今後は急速に下がって行くから、究極資源量の約半分である1兆バレルの残存埋蔵量があっても、今まで掘り出した1兆バレルと比べて、正味のエネルギーは半分にも満たない。代替エネルギーも概ね、化石燃料よりエネルギー収率が悪い。

各種エネルギーの収率についての種々な文献をホール(注1)やスミル(注2)がまとめている。それによると、アメリカの石油のエネルギー収率は1930年代には100以上だったが、1970年には30、2005年には11-18まで減少しているという。輸入石油も、2007年には既に12まで落ち込んでいる。化石燃料以外だと、シェールオイルが5、水力発電100以上、風力発電18、太陽光発電は6.8、トウモロコシエタノール0.8-1.6、サトウキビエタノール0.8-10、バイオディーゼル燃料1.3などとなっている。ただし、これらの値はまだ必ずしも固まった値ではないようだ。特に、生産に携わる人間の労働力再生産のためのエネルギーを投資エネルギーと見なすかどうかよって、エネルギー収率の値にが大きく異なってくる。また、同じエネルギーでも生産する場所によってかなり異なる。
(注1)HALL, Charles A. S. "Year in review—EROI or energy return on (energy) invested"
http://www.esf.edu/efb/hall/energy.htm
(注2)SMIL, Vclav "Energy in Nature and Society" MIT Press, 2008

一次エネルギー源の中でも、主役となるのは火力エネルギー源である。火力エネルギー源は自身の再生産のために他の一次エネルギー源を必要とせず、自身で自身を再生産できる。化石燃料を採掘するあらゆる機械やエネルギーはすべて化石燃料から生産できるのである。これに対して電力は、水力発電、太陽光発電、原子力発電、地熱発電、その他いかなる発電方式も、すべて火力エネルギー源の助けがなければ電力の再生産ができない。

このことから、火力エネルギー源だけが経済社会を支える真の一次エネルギー源であり、電力変換はエネルギーの利用法に過ぎないと考えることができる。水力発電など、他のエネルギー源を利用する発電は、エネルギーの増幅装置のようなものであり、火力から直接発電するより有利な電力の利用法なのである。水力発電は最もエネルギー増幅率の高い発電方式である。

化石燃料の収率が悪くなれば、どの発電方式でもエネルギー収支は悪化する。この意味で、電力は決して化石燃料の代替にはならない。化石燃料の収率が下がり、生産量が落ちて行けば、いずれは再びバイオマスが主役になる。化石燃料以外の火力エネルギー源はバイオマスしかないからである。ただ、バイオマスは年間に使える量が今までの化石燃料より圧倒的に少ないので、現在のような大量消費社会は支えられない。

現在のような大量消費社会を続けるのに最低どのくらいのエネルギー収率が必要かは、なかなか難しい問題だ。ホールは、石油の場合を10と仮定しているが、多分、現在がそれに近く、これ以下になると経済構造の大きな変更が必要だろう感じているからで、何か特別な方法で予測したものではないようである。

エネルギーの正味収率がどのくらいまで下がったら、社会はどのようになるか、という研究は今後に期待するとして、今後数十年、早ければ20年以内に、化石燃料のエネルギー収率がかなり下がるだろうと予想される。エネルギー収率の問題を真剣に考えると、いま世の中の人々が思っている以上に、深刻な状況にある。
2011年9月30日

  1. 2011/09/30(金) 11:28:28|
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