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縮小の時代

福島のサクランボ狩りと風評被害

今朝の朝日新聞に、福島のサクランボ狩りの予約が風評被害のため98%も減って苦しんでいる、という記事があった。記事は“28日、露地物のサクランボの放射性物質について「問題なし」との検査結果が公表された。だが、風評被害はおさまらない。”と書いている。朝日新聞もお粗末なものだ。

風評被害とは「事実に反する風評による被害」である。サクランボ狩りの風評被害を防ぐために必要な事実は、サクランボが帯びている放射性物質のすべての核種についてkg当り何ベクレルか、および、サクランボ農園の種々な場所における放射線量が何Svかという数値である。それらの数値が明らかにされて初めて安全かどうかの判断ができる。

放射性物質は問題なしという検査結果が公表されたと言うが、どれだけの放射性物質が検出され、どのような基準で問題なしと判断したのかは全く不明である。測定しなかった核種があるだろうし、問題なしの判断基準が甘すぎるかも知れない。

福島原発事故後の3月17日にあわてて作られた基準は、野菜類については、放射性セシウム500、放射性ヨウ素2000、ウラン100、プルトニウムなどのアルファ核種10 (いずれもBq/kg) となっているが、それ以前は、セシウムが370以上の食品は輸入を拒絶していた。

一方、FAO(国連食糧農業機構)とWHO(世界保健機構)が定めているCODEXという食品基準では、事故などの緊急時の場合、セシウム類の合計1000(1000)、ヨウ素、ストロンチウム、ウラン類の合計100(100)、プルトニウム類の合計10(1) (括弧内は子供)となっており、セシウムは日本の方が厳しいものの、他の核種は日本より厳しい。しかし、CODEXの基準も、絶対安全という基準ではなく、ある程度の危険確率を許容したものだろう。

したがって、現在の日本の基準を満たしているからと言って、決して100%安全というわけではない。許容するかどうかは消費者の判断によるしかないのである。

サクランボ狩りに限らず、すべての食品に同じことが言える。少しでも放射性物質を帯びている可能性のある食品は、各核種の量(Bq/kg)を表示しない限り、消費者が敬遠しても風評被害とすることはできない。

これは、食品の添加物と同じである。添加物が使われているかも知れないのにその表示がない食品は、いくら生産者が安全です、基準以下ですと宣伝しても、消費者は敬遠するだろう。これを風評被害とは言わない。添加物の種類と使用量の表示があっても、賢い消費者なら買わないかも知れない。これも正当な自己防衛である。

少しでも放射性物質を被った可能性のあるすべての食品は、すべての核種の測定結果を貼り付けなければならない。しかも、同じ県でも地域、農園、時期によって放射性物質は異なるから、大雑把なサンプル調査を一度しただけでは安心できない。安全な食品を提供することが生産者の使命であり、誇りであるなら、完璧にはできなくても、少しでもそれに近い努力をし、消費者が自分で判断できる数値を提供する義務がある。

これは大変なことだが、原発事故が起きてしまった以上、そうせざるを得ない。それにかかる手間も費用も、原発事故の被害であって、その努力を怠って風評被害のせいにするのでは、食品生産者の誇りも何もないのではないか。

原発の事故はかくも大きい。今必要なことは、この事故を矮小化して誤魔化したり逃げたりすることではなく、事故の大きさに正面から戦い、同じことを二度と起こさないための教訓とすることである。
2011年5月31日

  1. 2011/05/31(火) 13:12:27|
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