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縮小の時代

米国のパリ協定離脱表明が示唆していること

アメリカのトランプ大統領が6月1日に温室効果ガスの削減に関するパリ協定からの離脱を表明したことで、早速、各方面からの非難と抗議の声が上がっている。
世界第二位の炭素排出国であり、過去に排出されて残っているCO2の大きな部分を占めている米国が、排出削減に後ろ向きの姿勢を取るのは、確かに問題だ。しかし、ただトランプ大統領を非難するだけでは、大切なことが抜けている。

トランプ大統領のパリ協定離脱の理由は、自国の石炭産業を守るといった、環境より経済を優先することにもあるが、パリ協定は不公平と思っていることにもある。各国が公平なら、環境のために経済を多少は犠牲にしてもよいが、不公平である限りそれはできない、ということだろう。

彼が不公平としている理由は、世界最大の排出国である中国の削減目標が、米国に比べて甘すぎることである。中国は京都議定書では、排出削減の義務が全くなかったから、義務付けられたパリ協定は進歩ではあるが、まだ十分とは言い難い。

パリ協定による温室効果ガス削減義務は、先進国は:
 ・米国 2025年までに、2005年比26-28%削減
 ・EU 2030年までに、1990年比40%削減
 ・日本 2030年までに、2013年比26%削減
などとなっているのに対し、
 ・中国 2030年までに、2005年比で単位GDP当り60-65%削減
 ・インド 2030年までに、2005年比で単位GDP当り33-35%
となっている。中国やインドの削減目標が、排出総量でなく、単位GDP当りなのがミソである。

世界経済ネタ帳によると、中国のGDP(実質)は、2005年が28.1兆元であったのに対し、2016年は74.6兆元と、すでに2.6倍にもなっている。さらに、第十三次五カ年計画では、2020までに一人当たりGDPを2010年(47.9兆元)の2倍に増やすと言っているから、人口が今以上に増えないとしても、2020年には95.8兆元となる。経済成長をそれで止める積りはないだろうから、その後2030年までの10年間でさらに年2%の成長が続くと仮定すれば、2030年のGDPは、117兆元となる。これは、2005年の4.2倍である。

つまり、中国が2030年までに単位GDP当りの炭素排出量を65%削減しても、GDPが4.2倍にも増えるから、炭素排出量は1.5倍に増える。中国は既に世界最大の炭素排出国であり、途上国といっても金持ちが増え、自家用車を持ち、先進国並みの生活をしている人が多い。それが人口の1割しかいないとしても、既に日本の人口に相当し、英独仏の人口より多い。2014年末の乗用車保有台数は、日本の6000万台に対して、中国はその倍の1億2000万台にも達しているから、実際は日本の人口以上が先進国並みの生活をしていると考えられる。それなのに、途上国だという理由で排出量の増加を認めるのは、やはり不公平感を免れない。途上国の甘い規制で得をしているのは、途上国の金持ち連中なのである。

それでも、一人当たり排出量からすれば、2030年の中国でも、まだ先進国より少ないから、中国の削減目標が緩いのは不公平には当らないという意見もあるだろう。しかし、人口が多いのも、人間の責任が全くないわけではない。毛沢東時代には、人間こそ最大の生産力として、産めよ増やせよの政策をとった。子孫の多い事は繁栄であるという単純な思想から、自然環境の容量もわきまえずに勝手に人口を増やしてきたのは人間であって、天が与えた偶然ではない。人口が多い事に対しても、そこまで増やしてきた人間が責任を取るのが当然である。日本も、現在は少子化、人口減少と言って、重大問題であるかのように騒いでいるが、もともと、日本の国土に対して1億2000万人は明らかに多過ぎる。江戸時代の人口は3000万人程度で、それ以上にならないように、大変過酷な管理をせざるを得なかった。江戸時代よりも肉食が多い現在は、3000万人でも自給自足は無理かも知れない。今は外国から食糧や資源を輸入しているが、いずれ、それが不可能になれば、自給自足できる人口まで減らさなければならない。その責任は日本人自身が取らなければならない。

途上国の排出規制が甘いことには、もう一つ別の問題がある。それは、甘い規制で経済的に得をしているのは、途上国だけではなく、国際企業だということだ。人件費が安いだけでなく、排出規制が甘いことでも生産コストが安くなり、それを目的に国際企業が生産拠点を途上国に移して、それだけ利益を増す。その利益は、結局は世界の億万長者に集まり、その悪影響は途上国も先進国も含めて一般庶民が受ける。温暖化防止条約が途上国優遇を続けるのも、国連そのものが国際企業や億万長者の意向を強く受けているからである。

トランプ大統領は億万長者の仲間だから、金持ちが得をする現在の世界状況を根本的に変え、本当に人民の、人民による、人民のための政治を志しているとは思えないが、彼の、一見暴挙と思える政策には、事の本質を考えさせる要素もある。ただトランプを非難するだけでなく、これを機会に問題の本質を考え直すことが必要だろう。■
2017年6月3日
  1. 2017/06/03(土) 16:22:33|
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