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「自国第一」は間違いではないが

トランプ新大統領は、繰り返して「アメリカ第一」を強調している。それ自体は誤りではない。世界中に、自国第一でない国、言い換えれば、自国より他国を大切にすると宣言している国はないだろう。日本でも事あるごとに国益、国益という言葉が出てくるが、これも「日本第一」と変らない。

しかし、ある国が「自国第一」とすることは、同時に、他のすべての国の「自国第一」を尊重することでなければならない。これは、人間誰でも自分第一であることは当然だが、同時に、すべての人間の自分第一を尊重しなければならないのと同じである。他国を犠牲にする自国第一は、他人を犠牲にする自分第一と同じように、弱肉強食、食うか食われるかの、人間が目指す民主的で平和な社会とは正反対の社会になってしまう。現在、世界の成り行きが非常に危険な状況にあるのは、世界を動かしている政治指導者の中に、このことを本当に肝に命じ、はっきりと宣言している人が一人もいるように見えないからでもある。

今日の新聞によると、トランプは、日米の自動車貿易は不公平だと攻撃している。2015年の完成車輸出入は、日本からアメリカへ160万台であるのに対して、アメリカから日本へは29.5万台でしかないのは、確かに不均衡である。しかし、関税はアメリカが2.5%であるのに対し、日本は無関税である。それでも不均衡なのは、アメリカでの日本車の人気ほど、日本でのアメリカ車の人気がないからで、これは貿易制度のせいではなく、商品の問題である。また、日本には軽自動車の税制優遇や排ガス規制の違いが貿易障壁になっているという指摘もあるが、これは日本の固有の事情による政策であって、外国もそれを尊重すべきであって、非難は当たらない。

自由貿易というと聞こえは良いが、その自由とは、売手側の自由の押し付けに過ぎず、買手側の自由は認めないのである。交易とはそもそも買手側の自由で成り立つものであって、買いたくない物を無理やり押し付けるのは、正常な取引ではない。自由貿易主義の問題はここにあると言っていいだろう。買手側の自由とは、買う商品の選択の自由であると共に、選択の基準を設ける自由も含まれる。環境保護のため、自国の産業を守るため、自国の文化や秩序を守るため、その他の理由で関税や輸入制限をかけるのは買手側の当然の権利でなければならない。

また、交易は人によって欲しい物が異なるからこそ成り立つものである。互いに自国では生産できないもの、生産が得意でないものを輸入するのだから、同じ種類の商品に不均衡があるのは当然で、そうでなければ交易する意味すらない。アメリカが自動車貿易の不均衡を解消したいと思ったら、日本では生産できない、日本人が欲しがる商品を開発するしかない。日本人が軽自動車を好むのなら、日本の軽自動車より優れた軽自動車を開発するしかない。あるいは、アメリカは自国の自動車を保護するために輸入車に高い関税をかければ良い。もちろん、これは同時に、日本がアメリカの農産物に対して高い関税をかけるのを尊重することでなければならない。

商品毎に不均衡があるのは当然なのに貿易協定を結ぶのは、双方の政府が、その方が互いに国益になると判断するからである。日米間で、日本政府は農産物では輸入過剰でも、自動車などの工業製品で輸出過剰になれば、全体としてその方が良いと考え、アメリカ政府は工業製品の輸入過剰を農産物の輸出過剰で補えばその方が良いと考えていたのが今までだった。日本政府はこの考えを続行しようとしている。しかし、それは政府の考え方であって、それが本当に日本にとって良いとは限らない。工業はそれで良くても、農業は大打撃を受ける。日本の政策は、工業のために農業を犠牲にしても良いとしているのである。

トランプはこの考え方を変え、すべての商品種類でそれぞれ貿易が均衡するべきだと言っている。日米の自動車貿易不均衡に対して、トランプが具体的にどのような政策を出すのかは不明だが、日本政府にアメリカ車の輸入を強制したり、アメリカ車の購入に政府が援助金を出したりすることを求めるとしたら、言語道断である。また、自動車の不均衡の代わりに農産物など自動車以外の商品の関税を下げ、他の貿易障壁をとり除けなどと要求するのも、言語道断である。日本がアメリカの強行姿勢に屈して農産物の輸入障壁を緩和すれば、日米の農産物の貿易不均衡はますます増大する。トランプが公平の原則に立つのなら、アメリカは、日本にアメリカ産の農産物輸入拡大を迫るよりも、アメリカが日本の農産物輸入を拡大するために、アメリカ内で必要な処置を取るべきである。そうして、農産物の輸出入が均衡しない限り、自動車の均衡を主張する資格はない。そうでなければ、アメリカの都合を相手に押し付けるアメリカ第一であって、本来のあるべき自国第一ではなく、自国のために他国を犠牲にするヤクザ貿易と変わらない。

トランプのアメリカ第一に対して、日本政府や日本の企業はどのように対応するのだろうか。トヨタがメキシコの新工場を取りやめたり、トランプに気を使ってアメリカに新工場を作るのは、自分の商売のために相手の事情に合わせることで、屈辱でも何でもない、当然の商行為である。だが、政府が農作物の関税を下げたり、軽自動車の制度をやめたり、貿易障壁となりそうな環境規制その他の規制を緩和したりするのは、アメリカの押付けに屈することである。それでも、日本政府が、その方が日本の国益にかなうと判断するかもしれない。もしそうするとしたら、それは、農業や一般市民が犠牲になっても日本の大企業にとって有利と判断したためだろう。政府の言う国益とは、弱い企業や農業を犠牲にしても大企業の利益を守ることになる。(1月29日改訂)■
2017年1月25日
  1. 2017/01/25(水) 14:54:05|
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