縮小の時代

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日本の憲法にはルーズベルトの理想が反映した

憲法の変更を主張する人達は、今の憲法はアメリカの押し付けだからという理由を掲げている。本音は戦争放棄の第9条を廃止して武力行使を可能にするという、改正ではなく改悪、歴史の後退である。

もちろん、現在の憲法が必ずしも最高に理想的とは限らない。第9条は理想に近いと言えるが、その他の条項には再検討の余地もあるだろう。したがって、日本の憲法はどうあるべきかという根本的なところから議論を始める必要があるという学者の意見は、正当ではある。しかし、現在の日本国憲法には、より理想的な社会を目指すという立場から見て、急いで改正しなければ困るところは特にない。そんな現在、憲法改正の議論を始めれば、必ず議論は第9条に集中し、議会の数の力で強行され、改正より改悪の方に進む可能性が非常に高い。したがって、今は憲法変更の論議を持ち出さない方が良い。

現行憲法がアメリカの押し付けだからという理由は、全く議論にならない幼稚ないい訳に過ぎない。それほど日本の自主性を重んじるなら、まずは政治・経済・文化のアメリカ追従をやめるべきだ。政治と経済は、現在の全球化(Globalization)の中では、欧米諸国とある程度歩調を合わせる必要があったとしても、それでも日本のアメリカ追従は欧州諸国よりも酷い。

文化面にいたってはもっと酷い。アメリカ追従の必要は全くないにもかかわらず、日本人は進んで日本の伝統文化を捨ててアメリカ文化の真似をしている。日本語より上等で格好がよいと思うからだろうか(本当はみっともないのに)、世の中は、日本語で十分表現できるところまでもどんどんカタカナ英語に変り、昭和時代の日本語でさえ、多くが古語になろうとしている。次々出来る新しい集合住宅はほぼ100%カタカナ英語(一部は他の欧州語)だし、公共施設や公用文書までも安易なカタカナ語が余りにも多い。東京のスカイツリー、宇治の源氏物語ミュージアムなど、日本の名所にしたい建造物や日本文化の象徴的施設さえも、カタカナ英語を付けたがる。商店街では、店の名前がほとんどカタカナまたはローマ字の外国語であり、テレビのFM放送番組表もカタカナ外国語の羅列である。

安易なカタカナ外国語使用は、日本語の造語能力を損なっている。明治時代は、西洋から入った新しい抽象概念に新しい日本語が次々と作られた。経済や哲学という言葉がそれである。今は、何でも外国語をそのままカタカナで表すため、新しい、美しい日本語が生まれなくなった。電脳用語など酷いものだ。日本語の新語が現れても、「ださい」とか「やばい」とか、口にしたくない汚い言葉ばかりである。小中学校でも、日本語の古文や漢文や日本史よりも英語教育の方が重視されている。これでも「日本独自の」憲法をと言い張る資格があるのだろうか。

話を戻そう。現在の平和憲法は、当時のアメリカの理想が反映したものである。1941年1月、アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルトは議会に「4つの自由」を発表した。当時はソ連が急激に力を増し、労働運動や社会保障への国民の声が高まった時代でもあった。社会主義化への傾向を抑えるためにも、アメリカ合衆国を更に進んだ、世界に冠たる民主主義国家にしなければ、という機運が盛んだった。当時のアメリカは、第二次大戦への参戦は避けられない状況にあったが、戦争は単に敵を倒すためではなく、それまでの世界とは違った、新しい時代への転換点にならなければならないという考えがあった。全体主義からの最大の防御は、貧困も戦争もない良い社会を造ることと考えられた。

4つの自由とは:
①言論と表現の自由;
②宗教の自由;
③必要からの自由(すべての国の全ての人民に健康で平和でな生涯を保障すること);:
④恐怖からの自由(世界的軍縮、どの国も、どの国に対しても武力を行使しない);
である。

これは、単にアメリカ国内だけでなく、全世界、人類の全体を視野に入れた普遍的な考えである。4つの自由は多くの人に支持された。その4年後、第二次大戦の勝利がほぼ確実になった1944年、フランクリン・ルーズベルト大統領は、第二権利章典(Second Bill of Rights)を発表した。それは、経済的な保障と独立のないところに真の個人の自由は存在しないという理念の下に、
・有益で報酬のある職業につく権利;
・十分な衣食と余暇が可能な収入を持つ権利;
・農民が自分で栽培し、家族がまずまずの生活ができる価格で販売する権利;
・すべての職業人が、不公正な競争と独占がなく取引する権利;
・すべての家族がまずまずの住居に住む権利;
・十分な医療を受け、健康を達成して楽しむ権利;
・高齢、病気、事故、失業による経済的恐れから十分に保護される権利;
・よい教育を受ける権利。
を唱えたものである。これに先立つ1936年ルーズベルトは大統領は、「私の政権は商売と金融による支配に直接挑戦する初めての政権だ」と述べている。

当時のアメリカ政府が最も警戒していたのはファッシズムである。1947年の議会調査局(Legislative Reference Service of the Liberty of Congress)の調査報告書は、ファシズムの特徴として大企業好み、重工業の強化、エリートの利益追求を許す、カルテル化、巨大な軍事費、労働者の団体交渉および労働者による自治政府の禁止を挙げており、4つの自由と第二権利章典は、このファシズムへの最善の対抗になるものだった。

第二次大戦で日独伊のファシズム国家が敗北すると、ファシズムへの恐れは急激になくなり、ルーズベルトの理想はアメリカの憲法にも法律にも実現することがなかった。しかし、敗戦した日本を管理下に置いたアメリカは、日本のファッシズムの復活を防ぐことに最大の注意を払い、日本の憲法にルーズベルトの理想を盛り込んだのである。第9条は、4つの自由の一つである。

ルーズベルトの理想は、資本主義体制の枠内ではあるが、当時のアメリカとしては、人類社会が実現すべき最高の理想であった。自国のアメリカでは、その後の冷戦によって実現していないが、占領下にある日本だからこそ実現した。形の上では押し付け憲法ではあるが、決してアメリカ流の、アメリカ好みの思想の押し付けではなく、全世界に共通する普遍的な理念である。日本としても、もし日本が独自に憲法の草案を作ったとしたら、ここまで優れた憲法は出来なかっただろう。日本国憲法制定のいきさつは、日本にとって却って幸運だっといえる。

同じことはドイツにも言える。戦後の憲法を作ったのはドイツ人だが、やはりルーズベルトの理想が反映しているという。戦後最も急速に繁栄した国が日本とドイツであったのは、まさにこの平和主義の賜物である。

以上のように、日本国憲法はアメリカの押し付けだから自主憲法を、という理屈は、憲法という日本の将来、日本ばかりでなく人類の将来を左右するかもしれない大切な事を論議する根拠にはとしては、余りにも浅薄に過ぎる。それに、現在の日本では第9条を守るべきだという意見も、安部政権の戦争法案に反対する意見も大半を占めている。戦争法案を強引に通した安部自民党を中心とする政権が仮に憲法を変更したら、それこそ安部政権による押し付け憲法以外の何ものでもない。世界一の平和憲法に代わって、それより何段も落ちる憲法を押し付けられた日本人は、世界の、後世の笑いものにしかならないだろう。
(参考書:Robert W. McChesny and John Nichols "People Get Ready" Nation Books, 2016)

追記:
1980年代以後のアメリカは、ルーズベルトの第二権利章典からも却って遠のいている。アメリカの政治経済に追従している日本も同様である。一部への富の集中が激しくなり、格差が広がり、労働者の雇用条件も、社会福祉も悪化している。それにも関わらず、そんな日本に導き、その路線を踏襲し続けている自民党およびその亜流を、日本国民は相変わらず支持している。

そんな中で、アメリカの民主党大統領候補としてクリントンと争ったバーニー・サンダースは、ルーズベルトの第二権利章典を掲げ、人民による人民のための政治の推進を訴えている。彼は社会主義という言葉さえ口に出し、多数のアメリカ人の熱狂的な支持を受けている。もう少しのところでクリントンに敗れたのは残念だったが、「経済的な保障と独立のないところに真の個人の自由は存在しない」という理念の下に、富者と大企業のための政治から庶民のための政治に大きく転換する政策を掲げたサンダースがこれほどの支持を受けているのは、アメリカも本当に変るかも知れないという希望を抱かせる。少なくとも、戦後長い間禁句になっていた社会主義という言葉を、もはや禁句でなくしたことは大きい。そんなアメリカになったら、日本も追従してよい。■
2016年8月5日
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