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全国学力テストに宇宙エレベーターがでた

宇宙エレベータ1

4月19日に全国一斉に実施された学力テストの中学国語Bの問題に、「科学と未来」という雑誌(平成28年5月号)の記事が使われた。記事は「もう夢ではない! エレベーターで宇宙へ」という表題で、宇宙エレベーターについて中学生でもわかるようにやさしく説明している。国語のテストだから、問題は「文章は何について書いているか」といった類のもので、物理的な内容ではないが、この記事が題材に選ばれたのは、内容に間違いはないと信じたからだろう。しかし、宇宙エレベーターなど、ちょっと力学的に考えれば荒唐無稽である。

宇宙エレベーターの原理について、社団法人宇宙エレベーター協会のホームページに説明がある。要約すると、次のようになる。《 》内は、ホームページで使われている言葉である。
:http://www.jsea.jp/about-se/How-to-know-SE.html
**(宇宙エレベーター協会の説明より)***********
・静止衛星から地上に向けて《ケーブルを垂らす》。
・静止衛星がケーブルの重力で落ちてしまわないように、バランスを取るために上側にも《ケーブルを伸ばす》
・下向きのケーブルを更に伸ばす。バランスを取るため上側にも伸ばす。これを繰り返すとケーブルは地上に到達し、地上と宇宙を結ぶ一本の長大な紐になる。
・このケーブルに昇降機を取り付けて人や物資を運べるようにしたのが宇宙エレベーターである。昇降機もバランスをとるために上行きと下行きを取り付ける。
・以上は図を参照。
*****************************

この原理には次のような問題があり、実現は不可能だろう:

1. 静止衛星からケーブルを垂らすとあるが、重力では垂れない(衛星の軌道上では遠心力と重力が釣り合っている)。したがって、ロケットか何かで下向きにケーブルを発射してやらなければならない。同様に、上側にもケーブルを発射しなければならない。長いケーブルをどうやって発射するのか? 捕鯨船のモリは紐状のものを発射するが、とてつもない長いケーブルである。

2. 高度一定の衛星は、接線方向(地表と平行)の速度を持っている。この速度は地球中心からの距離に比例する(v = rω ここに、vは速度、rは地球中心からの距離、ωは公転角速度)。したがって、ケーブルの高度が異なる各点の速度を高度に比例して調整してやらなければならない。それが出来ないと、ケーブルは垂直にならず、大きくなびいてしまう。衛星から下側のケーブルは地球の自転方向に大きくふれ、衛星から上側のケーブルはその反対がに大きくふれる。この速度調整をどうやって行うのか?

3. 仮に長大なケーブルが垂直になり、それに昇降機をつけたとする。図では、バランスのために衛星の上側と下側に昇降機がついている。しかし、この昇降機の上げ下げはどうやって行うのか。 衛星の位置では重力と遠心力が同じだから昇降機を下げるにも上げるにもロケットのようなもので発射しなければならない。地上にある普通のエレベーターのように、ケーブルを巻き上げるというわけには行かない。

4.仮に昇降機を上下に動かすことができても、高度に応じて接線方向の速度を調節しなければならない。衛星の上側も下側も同様である。これを行わないと、昇降機は垂直から大きく外れてしまい、目標地点には届かない。これをどうするのか。

5.昇降機は衛星の地点では遠心力と重力が等しい。地球中心からの距離がrの地点では
遠心力 Fc = mrω2
重力 Fg = GMm/r2
となる。ただし、Gは万有引力定数、Mは地球の質量、mは昇降機の質量、ωは角速度(地球自転の角速度で24時間で360度)である。したがって、遠心力は高度に比例して下がり、重力は高度の二乗に反比例して上昇する。衛星から半分まで下がったところでは、遠心力は半分に、重力は4倍になるから、重力が遠心力より8倍も大きい。昇降機がずるずると落ちて行かずに一定の速度で下りるためには非常に複雑な力と速度の制御が必要だが、これをどうするのか。衛星より上側に行く昇降機についても同様である。

何万kmものケーブルをどうやって打ち上げるのかという問題は別にしても、宇宙エレベーターは、地上のエレベーターとは全く違う。地上ではケーブルに取り付けた昇降機は垂直線に沿って上下する。地球の半径に比べてケーブルの長さは無視できるほど短いから、同じ垂直線上にある接線方向(地表に平行)の速度成分の変化も無視できるのである。しかし、宇宙エレベーターではこれが大きな問題になる。仮に月が常に同じ天の位置にあるとしよう。静止衛星からケーブルを垂らすという着想は、月に置いたケーブルが、発射装置を使わなくても自然に地球に向かって一直線に伸びてくると考えているのと同じである。ケーブルが垂直にならないのは、ロケットの発射を考えてみてもすぐわかる筈だ。地球から天空に静止していると仮定した月にロケットを発射しても、ロケットは地球から月まで一直線で進むことはできない。これを一直線にしようと思ったら、道々、非常に複雑なロケットの制御が必要になる。

長さ何万kmものたわみやすい紐を、あたかも剛体のように一直線を保って宇宙空間に保持する。しかも、その直線の方向は地表に対して垂直、公転方向には直角の方向であり、地表に達している部分は、地表の定点から動いてはならない。こんなことはとても不可能である。
宇宙エレベーターは高校生の物理も理解できていない人間の荒唐無稽な考えに過ぎない。こんな馬鹿げた構想を全国テストの国語の題材に取り上げる方もどうかしている。理科のテストの題材にして、問題点や感想を書かせるなら別だが。■
2016年4月21日
  1. 2016/04/21(木) 16:41:01|
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