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縮小の時代

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個人投資の奨励:不況時の損失を個人に負わせる?

小額投資非課税制度が来年1月から実施される。日本人のための日本の法制なのにまたまた日本語を嫌ってニーサ(NISA:Nippon Individual Savings Account)などという、一般の日本人には意味の推測すらできない英語式の愛称をつけた役人の感覚には呆れるが、それはそれとして、これは年間100万円以下、5年間で500万円以下の小額投資の場合、株式の売買や配当による利益に対する課税率を軽減するもので、個人投資の奨励を目的としている。

本来の健全な投資とは、社会的に意義のある事業のための出資である。普通なら成功の確率が十分高い場合にしか出資しないだろう。失敗の可能性はあっても社会的な意義が大きいため、果敢に実施すべき場合もある。この場合でも失敗もやむを得ないと思う覚悟が必要である。したがって、投資はもともと失敗しても破綻せず後悔もしないで済むほどに資金的余裕がある場合に行うべきもので、このような健全な投資なら経済成長のためではなく、経済成長が必ず必要でもない。縮小社会の投資とはこのようなものであろう。現在のように、ただ金を儲けることのみを目的とする投資は泡沫的成長、資源の浪費、環境破壊、経済格差など悪い影響をもたらすだけで、社会的行為として決して健全ではない。

経済成長が順調な時代は投資の成功率が比較的高く、したがって賭博性は低かった。しかし、本当に必要な物がほぼ満たされた上に資源が減少し始め、経済拡大の余地がなくなった現在では、投資は成功率が低下して賭博性が高くなった。実体経済の成長が鈍った代替として実体財を伴わない金融やサービス業などが増えたことも、投資の賭博性を一層大きくしている。経済競争は拡大競争から椅子取り競争に変っているから、成長企業の陰には必ず破産企業があり、投資で儲ける人がいれば必ず損をする人が出る。こんな時代になっても、政府はいまだに成長経済の幻想を抱いて投資を煽り、経済をますます虚構化するという愚策の上塗りをしているのである。

現在は個人投資家がかなり増えているそうだ。彼らの多くは、一日中テレビ・ラジオ・電脳にしがみついて株式市場の情勢を監視し、企業が社会的にどんな意義を持つのかなどは一切お構いなしに、ただ株価が上がりそうだという予測だけで株を買い、株価が上がれば儲かったと喜び、儲けが最大になるか、または損が最小になる時期を選んで売却し、すぐまたもっと儲かりそうな別の株をあさる。寝ても覚めても株のことが頭を離れないように見える。これはあぶく銭を狙った賭博そのものである。投資家というより投機屋、あるいは博徒といった方が合っており、品格ある人間にふさわしい行為ではない。このような人が増えたのは、情報機器の普及もあるだろうが、経済が実体から離れ、短期間の変動が大きくなったことにもよるのだろう。

こんな危ない個人投資を増やそうと、政府は課税に優遇措置をとろうとしている。見苦しいカネの亡者を増やすことが日本のためになると政府のお偉方は思っているのだろうか。この優遇措置による税収の減少が、増税された消費税で補われるかと思うと、やりきれない気持ちがする。

この個人投資の奨励は、眠っている個人の貯蓄を投資に回して経済成長を促進させることが目的だが、そういう表向きの目的の他に、来たるべき株式市場の大暴落の損失をできるだけ個人に負担させようという政府の意図が感じられる。

成長経済の行き詰まりは自然の法則によって確実だから、株式市場が暴落する日は近いうちに必ずやってくる。通常なら株価が下がれば国債は上がるが、成長経済という経済構造そのものが原因の大不況だから、株も国債もみな暴落し、物価も下落して企業も銀行も倒産が増える。

企業は銀行から借金をすると、景気が悪くなれば返済が大変になり倒産の危険がある。しかし、株式なら、株価が如何に下がろうとも、投資家に返済する必要はない。損害は株の所有者がかぶってくれるので、個人投資の増加は企業にとって都合が良い。

銀行から見ると、物価が下落すれば預金の実質価値は高くなるから、たとえペイオフ制度があったにせよ、預金者に払い戻しするのは非常に大変だろう。どうしても銀行にその能力がなければ、預金者保護のため国が支援せざるを得なくなるだろう。しかも、現在は銀行からの貸出先が不足して預金がだぶついている(全国銀行協会によると、今年8月末の時点で、全国116行の総預金額が611.7兆円であるのに対し、貸出金の総額は434.6兆で、差し引き177兆円のだぶつき)。したがって、個人の銀行預金が株に流れても銀行として大して不利にはならないだろう。

個人から見れば、銀行に預金しておけば、銀行はたとえ破産しても優先的に預金者に返還してくれる。全額ではないとしても、最高1000万円までは返してもらえる。しかし、個人が500万円を銀行預金せず、その金で株を買ったとする。株式市場が暴落して500万円が丸損になっても誰も補償してくれず、すべて自分の責任になる。政府も補償はしないだろう。銀行預金にしておけば500万円は損しないで済んだ筈である。

このように、個人投資の奨励は、大不況になったときに企業や銀行の損害を減らし、代わりに、損害を投資者個人に負わせるものである。個人投資の奨励は投機、賭博の奨励であり、堅実な個人はそんな非常に危険の大きな政策に踊らされてはいけない。遊びの範囲ならまだしも、老後のための大切な預金を投じたり、これに生活を賭けるのはやめる方がよい。
2013年11月6日


  1. 2013/11/06(水) 22:14:15|
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