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縮小の時代

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リニア鉄道の経済効果は絵に描いた餅

次々回オリンピックの東京開催とリニア新幹線の着工で世の中が沸いている。約半世紀前の1964年、東京オリンピック開催と東海道新幹線の開通が高度成長時代の象徴であったように、今回もその再来を描いている人が多いようだ。そこに見られるのは、相変わらずの成長神話と技術神話である。経済は無限の成長が可能、成長すればするほど、速度は速ければ速いほど、技術は複雑・巧妙・高性能であるほど進歩であり、可能な技術は実用化するのが当然だ、それが人を豊かにし、幸せにする・・・。しかし、神話は人間が頭の中で造り出したものに過ぎない。技術には必ず反面があり、現実は神話のようにはならない。社会の条件も自然環境の条件も半世紀前と大きく異なっている現在は、1964年当時とは全く異なるのだ。

リニア新幹線にもいくつかの問題が指摘されている。例えば、建設と運行のコストが非常に高く、採算がとれるかどうか疑問;消費電力が大きい;地震や災害には大丈夫か;トンネルばかりでつまらない;大都市集中がますます進む;等々。
どんな事業でも環境影響、社会的影響、経済効果など様々な面からの評価が必要であって、リニア新幹線でも、一通りの検討はされなかった筈がない。しかし、その評価を行うのは、決まって事業を実施する企業や、企業の立場に立つ第三者機関または政府等であるため、成長神話や技術神話と利益優先がすべての問題を過少評価して楽観的な結論になってしまう。国民もマスコミもまた、成長神話や技術神話を信じ込み、リニア新幹線も東京オリンピック開催も夢の実現だと歓迎している。

新幹線開通による好景気は本当に再来するだろうか。そこで、東京大阪間のリニア新幹線計画を東海道新幹線の開通時と比較してみよう。リニアは2012年(人口1.275億)の数値、新幹線は1964年(人口9718万)の数値による:
(1)建設費:リニアは9.3兆円、新幹線は3800億円。
人口一人当り建設費:リニア73000円、新幹線は3900円;
(2)実質GDP:2012年は520兆円、1964年(新幹線開通)は105兆円
1人1時間当りGDP:2012年は466円、1964年は123円;
(3)短縮時間:リニアは現在の新幹線より80分短縮、新幹線は在来線より3時間短縮

リニアの建設費は新幹線の24.5倍であるのに対し、現在のGDPは新幹線開通当時の4.95倍でしかない。一人当りGDPで見ればさらに小さく3.79倍でしかない。つまり、リニア建設費の経済負担の重さを新幹線と比べると、国全体では5.0倍、1人当りでは6.5倍にも高まっているのである。リニアの大阪までの開通は32年も先の2045年だから、その頃にはGDPも今より上がっているかも知れないが、もしそうなら、建設費も計画より高くなるだろうから、同じことである。むしろ、過去の経過を見れば、建設費の上昇の方がGDPの増加を更に上回る可能性の方が高い。

これだけ増えた経済負担率に、経済効果は伴うのだろうか。時間短縮効果とコストを比較してみよう。1964年の1時間当り生産は平均して123円だから、1人の利用者から見ると、新幹線で短縮された3時間を生産に回せば新たに369円の生産ができる。建設費は1人当り3900円だから、1回の乗車で建設費の9.5%を回収できた。リニアの場合は節約された80分で新たに生産できるのは621円だから、建設費73000円の0.85% しか回収できない。つまり、時間短縮による生産性の向上という意味では、リニアのコスト効果は新幹線の11分の1しかないのである。

しかも、これは建設費だけの話だ。リニアの電力消費は新幹線の3倍というから、運行費も新幹線よりかなり高くなる筈である。また、安全のための維持費用も当然高くなるだろう。飛行機との競合のため、運賃は新幹線より1000円高(東京大阪)に抑える計画らしいが、おそらく、それでは赤字が大き過ぎて無理だろう。仮にそれを実施しても、不足分は何かの形で必ず国民負担になる(他の路線の値上げや税金)。

これからは安価で良質の化石燃料資源が急速に減少するので、エネルギー価格も資源一般の価格も上昇を続け、経済全体が縮小してゆくのは避けられない。そうすれば、業務上も日常生活上も長距離移動の必要が減少し、大阪まで開通する2045年頃には、高いリニア鉄道に乗れる人など非常に少なくなるに違いない。経済神話や技術神話から離れて冷静に考えれば、無駄になることは最初からわかっているのである。

そもそも、速ければ速い方がよいと本当に皆が思っているのだろうか。今は新幹線だけが黒字で在来線はほとんど赤字というが、新幹線の開通以来、在来線は意図的に不便にされて、嫌でも新幹線に乗らざるを得ないようにさせられて来た。特別に急ぐ理由がない限り、ゆっくりでも安くて快適な列車の方がいいと考える人も多い筈である。また、名古屋から東京まで1時間以内になっても、わざわざ高い運賃を払って買い物に行く名古屋人がどれだけ増えると言うのだろうか。

新幹線の開通は、大阪の地盤沈下を加速した。交通の高速化と共に各地域の特色が失われ、地方の文化が乏しくなった。これ以上高速化しても良い事はほとんどなく、ますます地方の経済も文化も失われてゆくだけである。それは、東京の人間にとってもまたつまらないことだろう。
2013年9月23日


  1. 2013/09/23(月) 11:58:43|
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