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縮小の時代

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高層建築と大都会のはかない未来

大都市では何十階建の高層マンションが急速な勢いで増えている。首都圏では4、5月の高層マンションの売れ行きが前年同月比で5割も多かったそうだ。普通は、上の階になるほど値段も高い。大都会の贅沢な夜景を一望できる広々とした洋風の居間のある高層マンションに住むことを夢見ている人も多い。マンションだけでなく、世界中が高層ビルの建設を競っている。摩天楼の林立は高度な近代文明社会を最もよく象徴しているようだ。東京や大阪のような大都市から、地方の小都市に至るまで、その首長、住民、政財界の多くが、わが町をそんな姿にしたいと望んでいるのではないだろうか。

空から見る東京の風景がテレビでもよく放映される。見渡す限り、地平線の彼方まで、コンクリートの建物がぎっしりと密集し、あちこちに、場所によっては群れを成して高層ビルが天を衝いている。建物群の谷底を縦横に貫くアスファルトの道路には自動車があふれている。東京は思いのほか緑が多いようだが、みな人工的な公園や緑地で、自然の森も草原も農地も全く見られない。この光景を見て、東京が世界有数の大都会であることを誇り、ここまで繁栄した工業文明の姿に満足を覚える人が多いかも知れない。しかし、私はむしろその逆に、よくぞここまで自然を破壊し尽くしたものだという慨嘆が真っ先に出て来る。自然が少なくなればなるほど、社会は情勢のちょっとした変化に対する柔軟な対応ができず、壊れやすくなる。

東京のような大都市や高層建築を支えているのは化石燃料である。これだけの建物、道路および様々な付帯物には、資源の採掘、資材の加工から最終の建設に至るまでの過程で、生産と運搬に消費されている電力と火力のエネルギー量は測り知れない。電力の大部分は化石燃料であり、運搬の大部分は石油である。建物を利用する際にもエレベーター、給水、冷暖房、照明などに、毎日多大のエネルギーを消費する。複雑化した現在の建造物は寿命が短いので、新築後50年も経てば大修繕、取壊し、再建築が必要となり、その度ごとに膨大なエネルギーが要る。

建物だけではない。この大都市に暮す膨大な人口が毎日何とか食べて行けるのは、ほとんど石油のお蔭である。農作物、魚介類、肉類、乳製品といった食品のすべても、また、衣料品その他の日常品も、大都会から遠く離れたところで生産され、運搬されて来る。石油の不足や高騰があれば、食糧の生産量は大幅に減少し、その上遠距離運搬も不可能になり、大都市の住民には食糧が届かなくなる。その状況は、おそらく終戦直後の食糧難よりはるかに悪いだろう。あの時の方が今よりは人口も少なく、都市域も小さく、比較的近くに田畑や漁村があった。

しかも、世界の化石燃料資源は急速に先細りになりつつある。世間では石油も石炭も天然ガスもまだ「当分の間は急激に減ることはない」と思われているようだし、シェールガスやシェールオイル、メタンハイドレートなど新しいエネルギー源にも期待がかけられているが、いずれも「まやかし」と言ってよい。環境保護に熱心な人達が推薦してやまない太陽光発電や風力発電もしかりである。人間は、現状がいつまでも続くと思いがちである。現在が比較的良い状態ならなおさらだ。現状を続けたいという願望から、現状を損なう客観的な原因には目を覆い、願望がいつの間にか続かない筈はないという信念に変り、何とか都合の良い理由を見つけては自分を納得させ、他人にもそう信じさせようとする。しかし、どんな理屈をつけようとも、今迄のように、高度に集中した良質のエネルギー源を大量に、安価に利用できる時代がいつまでも続くことは絶対にあり得ない。いつまでもそれが可能だと思うのは、結局は幻想以外の何物でもないのである。

特に問題は石油である。石油の産出は既に歴史的頂点を過ぎ、減少に向かったと見られる。アラビアの大油田も既にピークを過ぎている。石油は現在の交通運輸のほとんどを賄っている。天然ガスや石炭など他の化石燃料から石油を造ることは技術的には可能だが、エネルギーの損失が大きく、非常に高くつく。仮に安くて効率の良い製法が開発できても、そうして石油の代替にすれば、どの化石燃料もあっという間になくなってしまうから同じことだ。農作物から作る液体燃料も、量的に石油の代替にはなり得ない。石油が使えなくなれば、いわゆる再生可能エネルギーも使えなくなる。太陽光発電や風力発電の装置も、電気を使うための家電製品も結局は生産、維持、更新には多大な石油が必要だから、石油が乏しくなれば極めて高価なものになる。このように、大都会や高層ビルを支える条件は、既に根柢から崩れ始めている。もはや、大都会に発展はなく、崩壊だけが待っている。問題は大崩壊の過程で人間的被害をどこまで食い止められるかだけである。

現在の経済は実体より思惑で動いている。株もそうだが、原油も金属資源も穀物も、先行きの思惑だけで大変動する。先行きが良いと思われれば投資も活発になるが、先行きが危ないという見方が広がれば、投資が止まって経済は縮小する。いままで意図的に隠されていた、あるいは見て見ぬふりをされていた石油の先細りという事実は、近いうちに必ず表沙汰になり、原油価格は1バレル200ドル、300ドル、あるいはそれ以上に暴騰するだろう。「その時」が来るのは確実で、問題はその時期だけである。今すぐそうなっても何の不思議もないし、この先20~30年以内にそうなる可能性は、関東大地震や富士山噴火より大きいのではないだろうか。急騰による需要減少で原油の価格は再び下がる可能性があるとしても、だからといって現在のような大量需要に戻れば再び急騰する。安価で大量に石油を使える時代は二度と戻らないのである。

そうなると、東京のような大都市はたちまち動けなくなる。全国的に製造業が縮小するから、サービス業も金融も縮小して東京の経済は成り立たなくなる。高層ビルではエレベーターも給水も冷暖房も気軽には使えない。倒産する会社が多いから、ローンを払えなくなる人も増える。経費高騰のためマンションの維持管理も手抜きになり、ますます住みにくくなる。最近の建築は構造も内装も非常に複雑になっているから、その分だけ維持管理も重要で、寿命が短い。最近、赤坂プリンスホテルの解体が話題になったが、あのように高度な技術で解体できるのも、大量のエネルギーと経済力と組織力があってこそである。使えるエネルギーが減少すれば経済力も縮小するから、高度な解体技術は使えない。高層ビルは早いうちに利用も修繕も解体も困難になり、結局は住むことも使うこともできない邪魔物にしかならない。

それよりもっと大変なことは、膨大な人口を毎日食べさせるだけの食糧が入って来ないことだ。結局、大都市の住民は食糧を求めて地方に逃げ出さざるを得なくなるだろう。地方に行っても、食糧が手に入るかどうかはわからないが、少なくとも大都会より可能性はある。

これは、いたずらに危機感を煽っているのではない。自然資源、特にエネルギーや石油の状況がそこまで来ているのは、関東大地震や富士山噴火と同じように、客観的に否定できない事実なのである。したがって、相変わらず続いているエネルギー依存型大都市への投資は、この上ない無駄であり愚策であるとしか言いようがない。大きくなり過ぎた大都会、高層ビルの立ち並ぶ大都会の数十年後はネズミだけが栄えるゴーストタウンなのだ。建築物の耐震化に莫大な費用をかけても、都市の運営ができなくなれば何の意味もない。一般市民は、一生に一度の高価な買い物である住宅に大都会の高層マンションを選ぶのは絶対にやめた方がよい。賃貸住宅ならいつでも逃げ出せる。

現在の大都会にとっては、人口密度を減らすこと、大規模建築はできるだけ減らすこと、食糧を生産できる土地を増やすことなどが最も必要な政策である。だが、膨らみ続けてきた風船がとうとう破裂寸前まで来てしまった今となっては、どうしようもないのかも知れない。参院選のほとんどすべての政党も候補者も、エネルギーや資源がいつまでも現在と変わらないという幻想に浸って、経済回復や元気の出る日本(つまり景気の良い日本)という能天気な政策を打ち出している。彼らが考える投資は、名目が環境保護であれ、雇用促進であれ、経済成長であれ、結局は建設、維持管理、更新に多大な石油や化石燃料を要するものばかりで、「その時」が来ればみな捨てられる運命にある。こうして、当分の間、政治も行政も、ますます崖っぷちの方向にしか動きそうもない。一般庶民にできることは、その時が来るのを覚悟して準備をしておくことぐらいだろう。
2013年7月15日


  1. 2013/07/15(月) 11:23:12|
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