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太陽光/風力発電は原発の代替になり得るか?

脱原発のために、太陽光発電や風力発電に投資して普及促進すべきだと考えている人が多い。だが、発電方式にはそれぞれ特徴があって、実際には太陽光/風力発電は原発の代替にはならない。日本で実際に原発の代替になり得るのは火力発電だけである。今は脱原発が最も大切な課題だから、太陽光/風力発電などの「いわゆる」自然エネルギー[1]の清潔なイメージが少しでも多くの人をその方向に誘うのなら、嘘も方便という考え方もあるが、これは決して小さな誤りでなく、エネルギー政策の根本にも関係する。方便とは言え、物理的な誤りを誤魔化してイメージだけで人を誘惑するのは科学の倫理に反するし、いつか必ず事実が嘘を暴く。

日本では電力の品質に対する要求が非常に高い。周波数(50Hzまたは60Hz)は±0.1Hz~±0.3Hzという非常に高い精度で一定に保たれており、電圧も法定では101±6Vだが、実際はこれより遥かに精度よく管理されているという。電力の需要や供給(不慮の故障などによる)が急変すると周波数や電圧に影響するので、電力会社は需給の変化に素早く対応して発電所の負荷を調節し、変動を防いでいる。

しかし、発電の方式によって負荷調節の容易さや運転コストに差がある:
・水力発電:調節が最も容易(水量の調節だけ)、運転コストも安いが発電可能量は少ない;
・天然ガス/石油火力(ガスタービン):調節は比較的容易(燃料)、運転コストが高い;
・石炭火力(蒸気タービン):敏速な調整は困難(ボイラの燃焼と蒸気)、運転コストは安い;
・原子力発電:最も調整が困難、(電力会社の計算では)運転コストは安い;
・地熱発電:安定的で運転コストは比較的安いが、資源量は少ない。蒸気タービンだから、調節性はやや劣るだろう;
・バイオ/ゴミ火力(蒸気タービン):追従性は石炭火力に準ずるが、資源量が少ない。

したがって、電力会社は場合に応じて最適の発電所を選択する。例えば、電力需要が最も少ない時間帯の負荷を基底負荷(Base Load)として原子力や石炭火力が最適効率で定格発電する。東京電力管内では、2010年の最低負荷時間帯は、最低が5月4日朝5時の2142万kW、最高が8月4日の2593万kWだった[2]。大震災以前の東電の原発17基(福島県10、新潟県7)の合計認可出力は1730.8万kWだったから[3]、基底負荷にかなり近い原発設備があったことになる。

太陽光発電は時刻によって大きく変化し、夜には全く発電せず、昼間でも天気次第である。風力発電は時刻には関係しないが常に風まかせで分単位で変動して全く予測がつかないし、やはり全く発電しない時がある。したがって、太陽光/風力発電を増やしても、原子力発電が担っていた基底発電の代りにはならない。勿論、それでも人間としての倫理から、原発を即廃止すべきであることは言うまでもない。

原子力に代る基底発電は、日本では当面は火力、特に出力の変化に時間のかかる石炭火力だろう。もし、太陽光/風力発電を最大限に導入し、基底発電として最優先に使ったらどうなるだろうか。需要が最も少ない時間帯には配電網に流れる太陽光/風力発電の割合が増える(夜間の場合は風力だけ)が、全く発電しない時もあるから、発電量の変動は100%にも達する。このような大きな変動に速やかに対応して安定電力を供給することはほとんど不可能だろうが、仮に可能でも、この変動を補う火力発電は、極めて効率が悪い。つまり、発電しない時はアイドリング状態で待機し、発電が必要になると、ある場合には比較的低負荷の範囲で、ある場合に低負荷から高負荷の範囲で、いずれも頻繁に負荷を変化させる。

これは渋滞時の自動車に似ている。停車してアイドリングしているかと思えば、発進急加速して少しだけ走り、すぐにまた急停車してアイドリングになる。こんな運転をすれば非常に燃費が悪いのは誰でも知っている。火力発電でも同じで、太陽光/風力発電の導入によって、発電所の効率が悪化し、化石燃料の消費量が却って増加する可能性が大きい[4]。


太陽光/風力発電を基底電力の最優先とせず、基底電力の一部を火力発電で行ったらどうだろうか。そうすると、太陽光/風力発電の発電が需要を超える場合があり、その時はせっかく発電しても無駄に捨てられる。電池や溶融塩の加熱、揚水ダムなどに蓄える方法もあるが、いずれも効率が悪い、容量が少ない、過大なコストなどの理由で、まだ現実的ではない。

結局、太陽光/風力発電は基底負荷以上の需要に使うしかない。しかしその場合でも、太陽光/風力発電の両方とも全く発電しない時があるから、電力会社は、常に総需要に応じられるだけの他の発電能力を持って待機させておかなければならない。しかも、太陽光/風力発電の設備が多くなるほど電力網に与える変動要因が大きくなり、火力発電の効率悪化をもたらす。

太陽光/風力発電の効果を宣伝する時に使われる数値は、それらで発電された分だけ火力発電所の発電量が減り、燃料が節約されたという、非常に単純な、現実を無視した計算に基づいたものである。変動を補う火力発電所の負荷が下がり、しかもアイドリングや頻繁な出力変動によって効率が非常に悪化すること、および、これらの損失が導入率が高くなるほど大きくなることは何も考慮されないので、全く信用に値しない。

結局、電力網の変動と化石燃料消費の増加を防ぐには、太陽光/風力発電の割合を小さくしておかなければならない。言い換えれば、太陽光/風力発電の設備容量が大きなるにつれて、発電しても有効に使えないで捨てる部分が増えてしまう。ドイツの電力会社E.on社の報告は、2004年には電力網に入れた風量発電は設備容量の8%で、2020年に政府の計画通りに増加すると、設備容量の4%しか有効に使えないと言っている[5]。デンマークやドイツなど、風力発電を積極的に増やした国では、電力網を保護するために、余剰電力を外国に輸出している。欧州という非常に大きな電力市場があるから、全体としてみれば導入率が低く収まっているのである。それでも、デンマークは風力発電によって化石燃料の消費が減ったという実績はない。

最後に強調しておくが、化石燃料消費を減らす(少なくとも増加させない)で脱原発を行うには、減少した発電量だけ消費を落とすしかない。これは無駄な生産、無駄な消費をやめることだが、より持続可能にするために必要であるし、それによって生活に支障を来すことはない。
2012年12月9日

参考資料
[1]「自然エネルギー」という言葉の欺瞞性についてはこのブログでも何度か書いた。例えばhttp://shitou23.blog.fc2.com/blog-entry-4.html
[2]東京電力でんき予報 "電力使用状況データ" http://www.tepco.co.jp/forecast/html/download-j.html
[3]電気事業者連合会、"FEPC INFOBASE 2010"
http://www.fepc.or.jp/library/data/infobase/pdf/info_b.pdf
[4]風力発電と太陽光発電:変動の損失は燃料節約を相殺する110604
http://shitou23.blog.fc2.com/blog-entry-32.html
[5] Wind Report 2005 E.on Netz


  1. 2012/12/09(日) 22:31:41|
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