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原発事故訴訟の限界

検察当局は、福島原発事故の業務上過失など刑事責任を問う、各地で提出された告訴状を受理することに決めた。これほどの事故を起こしながら誰も法的な責任を取らないで済むのでは事故の再発を防ぐことはできないから、刑事責任の追及は当然のことである。刑事の他にも、多大な精神的、経済的損失を与えた民事責任も当然あるだろう。検察には是非厳しく責任を追及してほしいし、裁判所には厳しい罰を下して欲しいものだ。

しかし、この種の裁判には限界があり、これだけでは原発の根絶には結びつかないことも心得ておくべきだ。例えば、福島原発事故告発団による告発状を見ると、問われているのは業務上過失責任で、具体的にいくつかの項目が挙げられているが、いずれも次の二つに大別されている:
(1) 地震の起りやすい場所に立地したこと;
(2) 津波対策の不備。

言い換えれば、地震が起こりにくい場所で、しかも津波対策が万全ならば原発を造ってもよいという論理で、この告発状の中でもフランス、アメリカの東海岸、四川省を除く中国、インド、カナダは地震のほとんど起こらない地区と述べている。したがって、仮にこの告訴が原告側の完全勝利に終わっても、地震や津波のない(今までなかったというだけで、将来も絶対にないという保証はない)地域では今後の原発建設の是非について参考にはならない。

この告発の争点は「安全確保に怠りがあったかどうか」であり、安全確保に怠りなかったと判断されれば原発を造ってもよいことになる。原子炉の寿命の期間さえ無事故で運転できれば、めでたしめでたしで終わることになる。しかし、このような安全の考え方自体が大きな問題であり、ここに必ず抜け穴が生じる。

現在の安全の考え方では、専門家に判断をゆだねればよいことになるだろう。地震の専門家、津波の専門家、原子炉設計の専門家。更に万全を期せば、材料や制御など、広い範囲に渡る各種の工学分野の専門家集団が判断することになるかも知れない。しかし、如何に広範囲の専門家が安全と認めても、それが真の安全保証にはならず、むしろ、専門家だけに判断を委ねるのは危険でもある。

工学者の安全判断はすべてを危険確率の数値で表すことである。これは、一見客観的であり公平であるように見えるが、実はそこに一定のイデオロギーに偏った価値観が存在している。そのイデオロギーとは、人・生物の生命や自然環境をも含めてすべての価値が数値に換算できるということ、更には、そのように数値に換算できるものごとだけが考慮の対象であり、数値で表せないものは考慮する必要がない、ということである。

しかし、安全を考えるには、まず安全とは何かを考える必要がある。数値は安全の一つの目安にはなるが、それがすべてではなく、数値で表せないこともたくさんある。たとえ事故の確率が何万の一でも、人間としてやってよいことと悪い事がある。安全判断を専門家にまかせる危険は、数値で表せる物事以外は無視されてしまうことにある。

いうまでもなく、原発は人類が手をつけてはいけない技術である。原発は、数値で表すことのできない大きな危険をはらんでいるからである。事故による放射能、原発の廃棄物や廃炉が将来の地球環境や生物の生命圏にどれだけの被害を与えるかは、物理的な影響すら数値的な推定が不可能であり、それ以外にも、地球上に生きる生物の一種としての人類の道徳にも反する。

数値化できない安全は「安心」と言っても良いかもしれない。現在の世の中では、安心より安全を重視していないだろうか。なにかを心配すると、安全のデータを見せて安全だから心配ない、安心せよと説得される。しかし、安全より安心の方が大切である。安全のデータは安心させるための一つの根拠にはなるが、それで安心できるかどうかは専門家ではなく、当事者それぞれの判断による。個人の安心を専門家の安全基準で決めることはできない。原発は、いかに専門家が安全を主張しようが、安心できない技術なのである。そして、人々が安心できないと感じることこそ、原発を許してならない最も重要な根拠なのである。いくら偉い専門家達が「この原発は安全です」と言おうが、それでも安心できないから設置は許さない、という権利が庶民にはある。
2012年8月9日


  1. 2012/08/09(木) 12:48:26|
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