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縮小の時代

英国のEU離脱は縮小の始まり


イギリスでは、国民投票でEU離脱賛成が過半数を占めた。これに対する日本の論調は、ほとんどすべて、経済に関することばかりである。それも、相変わらずの国際化、経済成長主義に基づいたもので、経済広域化がもたらす様々な問題や、民族や文化の本質について論じたものはほとんどない。株が上がったの下がったの、イギリスに進出した企業の事業の拠点を他に移すのどうのこうのという、馬鹿馬鹿しい話ばかりである。

今まで、世界は統一・統合の方向、つまり拡大の方向に進んできたが、その目的はひとえに経済のためだったといえる。欧州以外でもTPP、NAFTAなど経済的な統合は世界の各地域に及んでいる。WTOは世界中を一つの統一された経済圏にしようとするものである。物流や資金の流れを妨げる障害を取り除いて経済圏を広げることにより、企業にとっては商売がしやすくなり、庶民にとっては外国品が安く手に入る。経済の開放はすべての開放につながる。一国に閉じこもった閉鎖的な社会から、世界に開かれた社会になり、人々の視野が広がり、精神的にも豊かになり、将来が明るく見えるような気がする。

だが、実際はそうはならなかった。経済の広域化は、金持ちや大企業がより多く儲けるためには有利になったが、零細な企業にとっては厳しい競争にさらされ、結局は国際的にも国内的にも格差を広げることになった。特に、先進国では人々の最低限の必要が満たされてこれ以上欲しいものが減り、また、資源の制約もあって経済成長が鈍化した現在においては、金持ちがますます金持ちになるのは、貧しい者がますます貧しくなることである。世界はそういう時代になったのである。

外国人の流入を制限せよと大声で主張する人がいないのは、それが人間の自由や人権の侵害であり、反民主主義的であるようと思えるからだろう。だが、大量の外国人流入で、本当に民主主義が進んだだろうか。自由や人権がより尊重されるようになっただろうか。事実はその逆ではないだろうか。大量の外国人流入の、大部分は貧しい人達である。企業は安い労働力として使うだけで、外国人の大量流入によって賃金水準が下がり、自国民の生活も苦しくなる。イギリスのEU離脱派にとっても、それが大きな理由の一つだったようだ。

外国人の流入は、差別思想を広げる。企業が外国人を安い労働力としか見ないことは、自国民と差別していることである。企業だけでなく、全体として差別の思想が当り前になってゆく。安い外国人労働者も、やがてその国に定着し、子供が生まれ、子孫が増えて行く。しかし、将来は資源の制約が厳しくなれば、相対的に人口過剰となって、食糧や物が現在ほど簡単に手に入らない時代が必ず来る。その時、外国人に対する差別がますます酷くなるのは目に見えている。現在、外国人労働者の受け入れに賛成している人達に、いかなる場合でも絶対に差別はしないという覚悟はあるだろうか。

移民の多くは、自国での貧しさに飽き足らず、もっと豊かになりたい、先進国並みの生活をしたいという人達だろう。物価水準が低いルーマニアでは、イギリスなどへ出稼ぎに出た人が戻って、豪邸を建てているという報道があった。祖国の人々のためにという大志を持った移民、または祖国では迫害を受けたり戦争など生命の危険にさらされている人達なら一時的に受け入れて支援したいが、自分だけ先進国並みの生活をするのが目的の、そんな移民を、自国民を犠牲にしてまでも受け入れるのが必ずしも人道的とはいえない。個人の自由と権利の尊重は言うまでもないが、それには他人の自由と権利を侵害しないという原則がある。

外国人の大量流入で、文化や社会習慣が国際標準的になってゆく。独自の文化、独自の習慣が薄れ、文化の質は却って低下してゆく。人間は、最終的には自分の生まれ育った文化や環境の中に安住を見出し、そうして文化の多様性が生まれる。記憶が定かではないが、昔読んだ人類学者の梅棹忠夫の本だったろうか、人間にとっては政治的な国家への帰属より、民族的への帰属意識の方が大切だと書いてあったような気がする。

蟹は甲羅に似せて穴を掘るという諺がある。人間も他の生物と同じく、自分の身の回りの自然環境の中で、それにふさわしい暮らし方をするしかなく、限度を超えて拡大すれば必ず問題が起り、持続不可能になる。経済の国際化、市場の拡大は、自分の目の届かない、全く知らない土地の恵みに依存して自分の利益を増やそうというもので、これが数々の不合理を生むのは当然である。無理な拡大から、自然の縮小へが今後の世界の流れであり、イギリスのEU離脱もその始まりの一つである。■
2016年6月29日
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  1. 2016/06/29(水) 10:53:23|
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