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縮小の時代

経済成長しか頭にない貿易自由化論

TPP(Trans-Pacific Partnership:環太平洋経済協定)への参加の是非が問題になっている。これは、加盟国の間で関税などの貿易障壁をなくして自由貿易にするもので、その対象は農産物や工業製品だけでなく医療、教育、通信などのサービス産業にも及ぶ。経団連や輸出産業は積極派だが、農業や医療などは強く反対している。私は自由貿易主義には反対である。農業や医療関係者の反対理由はもっともなので繰り返さないが、賛成論者の賛成理由も非常にいい加減さを感じる。

賛成論はみな貿易自由化が経済成長に必要だということを大前提にしている。経済成長を無条件によいこととし、地球資源の制約の中で今まで以上の経済成長を続けることが可能かどうか、経済成長が本当に必要か、経済成長だけを求めて世界中が競争し合えばどんなことになるのか、ということは全く考慮しない。11月8日の朝日新聞の社説も、ただ自由貿易の推進が経済成長という国益のために必要だ、以上のことは何も言っていない。それによって被る農業の不利益は、経営規模を現在の10倍に広げればよい、と言わんばかりである。農業の大規模化は農業の工業化、アメリカ化であり、土地の破壊、土地に密着した農業技術の破壊でしかない。大新聞の社説にしてはお粗末すぎる。

エネルギーを始めとした各種資源の量的限界により、世界中がこれ以上の経済成長を続けることが不可能であることは、資源や環境の物理を考えれば明らかである。石油資源一つを取っても、需要の増大に対して油田の新発見は極めて少なく、埋蔵量は減少の一方である上に、「残り物」の採掘はだんだん困難になっている。石油の高騰時代が間近に迫っており、そうなれば大量の物流が困難になる。国際競争力のある産業にとっては自由化の推進が有利なように見えても、それは一時的に過ぎず、やがて輸出の依存度が大きな企業ほど苦しむことになるだろう。

地球全体の経済成長が行き詰まりになるのは目前だが、仮に行き詰まりが先に延びても、経済成長は人々の幸福に全く寄与しておらず、却って、成長志向が多くの人をますます不幸にしている。自由貿易の賛成者が目指すのは輸出の増加による利益だけで、輸入増加の利益ではない。輸出拡大の代償として国内の市場を開放し、それで不利益な産業が生じたら、何らかの補償をすればいい、くらいしか考えない。しかし、弱い者を踏み台にして金儲けをした者が、弱い者を本当に思ってくれたためしはない。有利な者が増々有利になるように規制緩和してきた結果である現在の格差拡大、失業者や貧困者の増加がそれを証明している。

そもそも、これ以上輸出を増やすこと自体に、何の意味があるのだろうか。輸出を増やしても輸入するものがなく、外貨という紙切れが貯まる一方である。無理に輸入を増やしても、本当に必要なものはあまりなく、ただ、資源を無駄に消費して地球の負担をますます増大させる。

互いに比較優位な部分を担当することによって相互の利益となるというのが、貿易自由化の古典的な理論である。しかし、それが成り立つのは人間の移動も資本の移動もない場合で、現在は相互の利益はあり得ない。国と国との間では表向き互恵のように見えても、実体は弱い方から強い方への資源の移動であり、それぞれの国の中でも有利な者と不利な者がはっきりしている。
2011年11月9日

======引用開始 朝日新聞社説2011年11月8日 =====
(http://www.asahi.com/paper/editorial20111108.html)
どうするTPP―交渉参加で日本を前へ
 米国や豪州、シンガポールなど9カ国による環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉に、日本も加わるべきか、否か。
 9カ国は、12、13日にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて、大枠での合意と交渉継続を打ち出す見通しだ。
 野田首相はAPEC出席の前に交渉参加を打ち出す構えを見せるが、与野党から慎重論や反対論が噴き出している。
■戦略づくりを急げ
 TPPのテーマは幅広い。関税引き下げだけでなく、医療や郵政、金融、食の安全、環境など、さまざまな分野の規制緩和につながる可能性がある。農業をはじめ、関係する団体から反対が相次いでおり、首相の方針表明を食い止めようとする政界の動きにつながっている。
 改めて主張したい。まず交渉に参加すべきだ。そのうえで、この国の未来を切り開くため、交渉での具体的な戦略づくりを急がねばならない。
 資源に乏しい日本は戦後、一貫して自由貿易の恩恵を受けながら経済成長を果たしてきた。ただ急速に少子高齢化が進み、国内市場は停滞している。円高の追い打ちもある。貿易や投資の自由化を加速させ、国内の雇用につなげていくことが、ますます重要になっている。
 世界貿易機関(WTO)での自由化交渉が行き詰まるなか、アジア太平洋地域にはアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の実現という共通目標がある。横浜で昨年開かれたAPECでは、FTAAPへの道筋の一つにTPPも位置づけられた。
 それに背を向けて、どういう戦略を描こうというのか。
 慎重・反対派は「なぜTPPなのか」と疑問を投げかける。関税撤廃が原則でハードルの高いTPPではなく、2国間の経済連携協定(EPA)を積み重ねていけばよいという主張だ。
 これまでの日本が、そうだった。すでに東南アジア各国などと10余りのEPAが発効している。だが、コメなどを対象外にする代わりに、相手国にも多くの例外を認めてきたため、自由化のメリットが薄い。
■EPA網へのテコに
 TPPでは、中小企業の自由貿易協定(FTA)活用促進や電子商取引など、WTOで取り上げてこなかった分野も含まれる。積極的にかかわってこそ、メリットが生まれる。
 「TPPには中国、韓国などの貿易大国が加わっておらず、意味がない」との指摘もある。
 しかし、TPPへの参加は中韓との交渉にも波及する。日中韓の3カ国が続けているEPAの共同研究について、中国は積極姿勢に転じた。当初の予定を大幅に繰り上げ、年末までに結論を出す。来年から交渉を始めることになりそうだ。
 米国が主導するTPPへと日本が動いたことで、中国がそれを牽制(けんせい)する狙いで方針転換したとの見方がもっぱらである。
 中断したままの日韓、日豪両EPAの交渉再開も急ぎたい。欧州連合(EU)とのEPAも事前協議から本交渉へと進めなければならない。「なぜTPPか」ではなく、TPPをてこに、自由化度の高いEPA網を広げていく戦略性が必要だ。
 「TPP参加で産業の一部や生活が壊される」との懸念に、どうこたえていくか。
 まずは農業である。特にコメへの対応が焦点だ。政府は、経営規模を現状の10倍程度に広げる方針を打ち出している。バラマキ色が強い戸別所得補償制度の見直しをはじめ、TPP問題がなくとも取り組むべき課題である。
■消費者の利益が原点
 規制緩和の問題はどうか。
 TPP交渉で取り上げられている分野は、米国が日本に繰り返し要求してきた項目と重なる。「市場主義」を掲げて規制緩和を進めた小泉内閣時代に検討された内容も少なくない。
 折しも世界各地で「反市場主義」「反グローバリズム」のうねりが広がる。格差拡大への懸念が「米国の言いなりになるのか」という主張と結びつき、TPP反対論を後押ししている。
 ここは冷静になって、「何が消費者の利益になるか」という原点に立ち返ろう。安全・安心な生活を守るため、必要な規制を維持するのは当然だ。TPP反対派の主張に、業界の利益を守る思惑がないか。真に必要な規制を見極め、米国などの要求にしっかり向き合いたい。
 TPP交渉では国益と国益がぶつかり合っている。「例外なき関税撤廃」の原則も、実情は異なる。米国は豪州とのFTAで砂糖を対象から除いており、この特例をTPPでも維持しようとしているのが一例だ。日本も、激変緩和のための例外措置を確保できる余地はある。
 もちろん、難交渉になるのは間違いない。しかし、参加しない限り、新たなルールに日本の主張を反映できない。TPPに主体的にかかわることが、日本を前へ進める道だ。
=====引用終り=====

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  1. 2011/11/09(水) 11:57:21|
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