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縮小の時代

池上彰の「エネルギーを考える」

録画しておいた9月18日のテレビ東京の、標記の放送を昨日見た。予想はしていたが、はやり解説には肝心なことが抜けており、こうなる筈だというより、こうありたいという希望的なシナリオに過ぎなかった。

エネルギーで最も肝心なことは、エネルギー収率の問題、すなわち、エネルギーを得るためにどれだけのエネルギーを投入しなければならないか、ということである。化石燃料が今日のような大量消費社会を造ったのは、まさに、エネルギー収率が非常に高いからであった。化石燃料のない昔は、エネルギー収率はほぼ1で、生産した食糧のエネルギーのほとんどを、食糧の生産に費やさなければならなかった。

石炭の発見は画期的であった。エネルギー収率は一挙に伸びた。蒸気機関の発明が、さらにそれを向上させた。石油は石炭より更にエネルギー収率がよく、再び経済を一挙に拡大させた。現在は残存資源が減って、エネルギー収率が年々悪くなっているが、それでも、投入したエネルギーの数倍から数十倍のエネルギーが生産できる。

しかし、資源は掘りやすく、質の良いところから掘られるから、後に残った資源ほど質が悪く、採掘や精製にエネルギーがかかる。化石燃料の収率も将来急激に悪化して行くのは必然で、もしエネルギー収率が2倍程度に下がると、例えば石油を1バレル生産しても、その半分は次の石油の採掘のためにとっておかなければならないから、自由に使えるのは0.5バレルしかないことになる。こうなると、現在の大量消費生活を維持するのは非常に困難になるだろう。

池上彰は、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマスなどの「いわゆる」再生可能エネルギーの共通問題はコストがかかることだと言っていたが、その理由には触れていない(注*)。コストが高いことは、まさに、エネルギー収率が悪いか、そうでなければ生産できる量が少なすぎることを表す。今後技術的な改善はあっても、現在の化石燃料に匹敵するまでには行かないだろう。そのことを掘り下げないで、ただ、みんなで高い電力を買えば10年後にはエネルギーの主体になるだろう、などと言っている。
注*「いわゆる」をつけたのは、太陽光発電等は真の再生可能エネルギーではないからである。詳しくは5月10日の記事 「自然エネルギー」という欺瞞語 を参照。
http://shitou23.blog.fc2.com/blog-entry-4.html

「いわゆる」再生可能エネルギーが主役になる10年後までの間として、天然ガスの何倍もの埋蔵量が発見されたシェールガスがエネルギー革命を起こしていると、池上彰はわざわざアメリカの採掘現場まで行って紹介している。シェールガスの採掘方法は紹介しているが、その問題点は全く触れていない。すなわちエネルギー収率である。普通の天然ガス層は、大きな空間にメタンが閉じ込められているから、穴をあければメタンが噴き出して来るが、シェールガスは細かな隙間がたくさんある頁岩(けつがん)という岩石の隙間の中に含まれたメタンだから、普通の天然ガスのように簡単には取り出せない。

地下2500mの深さまで垂直に掘り、頁岩(けつがん)層に辿りつくと、今度は頁岩層の中を水平方向に掘り進む。どうやって水平方向に掘るかは説明がないからわからない。こうして頁岩層の中にパイプを通すと、今度は地上から高圧の水をパイプに注入する。パイプの側面には多数の穴があって、そこから噴き出た高圧の水が頁岩を砕く。その後、水を吸い上げると、そのあとからメタンが吸い上げられるのである。

したがって、かなりのエネルギーを投入しないと、シェールガスの採掘はできない。しかも、水平掘削した井戸は寿命が短く、すぐ枯れてしまうから、次々と新しい掘削が必要である。また、埋蔵量が膨大といっても、隅から隅まできれいに取り出せるわけではなく、実際に採掘できるのは埋蔵量より遥かに少ない。これらのことを考慮すると、現在の天然ガスに比べてエネルギー収率がかなり落ちるはずである。池上彰はただ埋蔵量が多い、採掘技術が開発されたと喜んでいるだけで、実際のエネルギー収率がどのくらいかという最も重要な問題には一切無頓着である。また、池上彰は、注ぎ込む水に化学物質が含まれていることは言及していたが、それがもたらす地下水汚染など環境問題にはあまり踏み込んでいない。

シェールガス、「いわゆる」再生可能エネルギーの次に来るものとして、海流発電、波力発電、海洋温度差発電を紹介している。これらはいずれも、技術的には可能でエネルギー総量は多くても、時間的、面積的なエネルギー密度が低いから、大がかりな装置に比して得られるエネルギーの量が少ない。波力発電は発電変動も大きな問題だろう。海洋温度差発電については、600mもの深海と海面との温度差がわずか20℃である。現在の蒸気タービンは600-700℃、ガスタービンは1000℃もの温度差からエネルギーを取り出しているのである。効率は温度差に直接関係するから、海洋温度差発電は非常に効率が悪い。したがって、海流発電も波力発電も海洋温度差発電も、エネルギー収率が非常に悪い。メタンハイドレートは非常に深い海底だから、やはりエネルギー収率が問題だが、その他に、CO2の何10倍もの温室効果があるメタンが採掘の際に大気に漏れる問題は大きい。

池上彰は、さらにその先の主役はアーキアだと紹介している。これは海底の地下深くにある、CO2をメタンに変える微生物で、八戸沖の深海で大量に発見されたという。しかし、CO2をメタンに変換するには、エネルギーが必要である。深海の地下でこのエネルギーがどこから供給されるのかという最も肝心な点について、池上彰は何も触れていない。ただ、そんな微生物が発見されたというだけで、将来のエネルギー問題が解決できるかのように喜んでいるだけである。

「エネルギー資源はいくらでもある。将来の技術進歩でエネルギー問題は心配はなくなる。今必要なことはエネルギーの開発にカネをかけることだ。」これが池上彰の言いたいことである。出演していた3人のタレントが最後に揃ってニコニコしながら、納得顔で将来を安心していた。これでは、原子力発電の安全対策技術を説明して、だから絶対安全ですと、安全神話づくりの片棒を担いだ御用解説者と全く変わらない。
2011年9月22日


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  1. 2011/09/22(木) 12:33:34|
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