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縮小の時代

ナンバーワンとオンリーワン

6月20日の発表によると、理化学研究所と富士通の共同開発による日本のスーパーコンピューターが計算速度で世界一に返り咲いたそうだ。世界一を目指すスーパーコンピューターの巨額な開発費に対して、事業仕分けの際に蓮舫行政刷新相が「二位ではだめなのか」と削減を求めたのに対し、ノーベル賞学者の野依良治氏などが、世界一でなければ意味がない、と反論したいきさつがある。

結局、予算は復活されて開発が続行され、7年ぶりに世界一が達成されたわけだが、これに対して蓮舫さんと野依さんそれぞれの談話が朝日新聞(6月21日朝刊)に出ている。趣旨だけ書くと:

蓮舫「きわめて明るいニュース。ナンバーワンだけが自己目的になるのでなく、次はオンリーワンを目指し、どうやって学術、産業界、将来の明るい夢につなげてゆくか努力してほしい。」
野依「やはり科学や技術はトップを目指さないといけない。競争だから実現は不明だが、それを目指す必要がある。場合によってはナンバーワンを目指さなければならず、人によってはオンリーワンを目指す。科学技術の振興は日本の生命線。」

野依さんも世界一になることが必要だとは言っておらず、世界一を目指すことが重要だと言っているが、世界一に絶対的な価値をおいているという意味では同じようなものである。

しかし、世界一になってどうするのだろうか。わが民族の優秀性を誇りたいのだろうか。だがそれは価値観を画一化し、民族や文化に優劣をつけることに過ぎない。では先進技術によって世界経済で有利な地位を占めるためだろうか。それも、経済成長とグローバル化の継続を前提としており、持続可能な社会、すなわち限られた地球資源を世界の人々が仲よく分け合って共に平和で文化的な生活を達成しようという人類の究極な目的にはそぐわない。

競争は何でも悪いというわけではないが、あまり重視すべきでない。一番になることを重視し過ぎれば、他の多くのことが犠牲にされる。莫大な科学技術振興費の一方で、日本の福祉費はどんどん削られているのである。地方の荒廃も著しい。

個人の競争でも、例えば学校の勉強は、内容をよく理解して自分のものにすれば試験も合格点が取れるが、他人を押しのけて一番になることばかり狙うと、馬鹿げた余分なことに神経と時間を使い、学問の本質を見失い、他の大切なことが犠牲になる。日本では、こうして育てられた多くの秀才馬鹿が現在社会の歪みを造り出した。

ナンバーワンよりオンリーワンを重視する蓮舫さんの方がより大局的な世界観を持っているように思える。政治家としてはこの方が優れている。同じ価値ですべてを評価する必要はない。それぞれの個性や習慣や思想に基づいて最もやりたいことをやり、そうして社会の中で存在価値を認められることが、すべての民族や個人や文化が共存する唯一の方向である。

ナンバーワンの重視が競争世界であるのに対し、オンリーワンの重視は共存世界である。オンリーワンは、目指して達せられるものでもあるが、敢えて目指すことなく、結果としてそうなるものでもある。長い歴史によって作られた民族や地域それぞれの伝統文化はそのようなものである。個人でも同じで、自分の好みや信念に基づいて行動することが、自然に個性の発揮につながる。
2011年6月21日


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  1. 2011/06/21(火) 13:27:28|
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