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縮小の時代

技術神話:技術はどんな夢でも叶えてくれる

エネルギーや資源の問題は技術革新で解決できると信じている人が多いようだ。放射性廃棄物の最終的な処理方法も廃炉の方法も確立していないのに、世界に500基以上も原子力発電所が建設されて年々大量の放射性廃棄物を生み出している。

中国、インド、ロシアなどはこれから原子力発電を大幅に増やそうとしており、日本も震災前まではその路線上にあった(まだ見直しされてはいない)。これらはみな、そのうち技術が開発されるだろうとの安易な考えによっている。

地球の容量に限界があること知りつつ、エネルギーと資源の大量消費を一向にやめようとしないのも、技術開発によって何とかなると思っているからである。

技術の目覚ましい変化は、技術は人間の望みを何でも叶えてくれるという錯覚を生んだ。確かに、昔の人にとっては叶わぬ夢でしかなかったこと、夢にさえ想像できなかったことが、現在では数多く実現されている。一部を挙げれば:

人が空を飛ぶ(飛行機);
遠くの事が居ながらにして見える(テレビ);
遠くの人と話す(電話、通信);
江戸から京まで1日で行ける(鉄道、自動車) ;
その他、数え上げればきりがない。

しかし、これらを以てしても、どんな夢でも技術が叶えてくれると思うのは大間違いである。

第一に、実現していない技術はいくらでもある。例えば不老長寿の薬、物質電送、タイムマシン、透明人間、永久機関など。今後実現する見込みも現在のところない。

第二に、実現したと思われている夢も、実は種々な制約や問題を抱えながら一部が実現しただけのものが多い。例えば、昔の人の空飛ぶ夢は、鳥のように自宅の窓から飛び立つて好きなところ行くことだったと思うが、実現した飛行機は、遠く離れた広い空港、訓練された操縦士、面倒な搭乗手続きを要するものでしかなかった。テレビもテレビ局のお仕着せの画面しか見られず、見たいものが何でも見られるわけではない。その他、環境問題や社会問題をもたらした技術も多い。

技術は自然法則の応用だから、自然法則の許す範囲でしか実現しない。技術開発とは、自然法則に人間の望みを妥協させることでもある。

また、基本原理の上で利点がありそうに見えても、実際の製品として人間社会に受け入れられるためには安全性、使いやすさ、信頼性、コストなど多くの条件が必要であり、それらの条件を満たしてゆくうちに、原理上の利点がどんどん縮小し、最後には却ってマイナスになってしまうこともある。水素燃料電池自動車などはこの類であろう。

したがって、どんな望みも望み通り技術が実現してくれる、或いは、環境破壊や交通事故など、技術が起こした社会問題をすべて新しい技術が解決してくれると思うは大きな誤りである。

そもそも、もし技術が人間の思い通りになるのなら、現在の技術がこれほど様々な問題を引き起こしている筈がない。

もちろん、いかなる問題も技術による完全な解決は全く不可能だから技術の研究開発は意義がない、などと断言するつもりはない。思いもよらぬことが実現する可能性は捨てられない。とはいえ、それは予測がつかないことであり、環境やエネルギーに関しては、今のところその兆候はない。

実現化が保証ができない技術に将来をゆだねるのは、宝くじに当たる予定で生活設計をするのと同じ愚行であり、社会的に責任のある人のすることではない。地球環境、資源エネルギー、交通事故、その他技術が起こした数多くの問題は、技術革新に託す前に、現在可能な手段だけで早急に対策を立てるべきである。その鍵は重厚長大、高速、高機能から簡素化、小型化、低速化に方向転換することにある。
2011年6月10日


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  1. 2011/06/10(金) 23:06:46|
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